中国が飛行場の運営を開始した南シナ海・南沙諸島の状況をベトナム在留日本人の立場で考えてみた。

騒然としてきたスプラトリー諸島問題

南シナ海・スプラトリー諸島(南沙諸島)ファイアリークロス礁で中国が滑走路を建設し試験飛行を開始したニュースは日本でも大きく報じられているようです。

中国、スプラトリー諸島飛行場に試験飛行・着陸 ベトナムは非難声明(産経新聞)

実際Google MapsでFiery Cross Reefを検索すると、Google Maps上にもファイアリークロス礁に人工物が建設されていることがわかります。

Fiery Cross Reef (Google Maps)

また昨日は中国の大型船がベトナム漁船に体当たりをし、7名が海に放り出されて沈没しことがトップニュースになっています。

Táu cá vỏ thép Trung Quốc đâm chìm tàu cá Việt Nam  (Tuoi Tre)

実際ファイアリークロス礁とはどこにあるのか?

実際、Googel Maps上にファイアリークロス礁を中心において、200kmの同心円を描いてみました。firely

400km範囲内は公海(中国は領有権を主張していますが・・・)上、600kmでベトナム、ブルネイ、マレーシア、フィリピンが含まれます。

私の住んでいるホーチミン市は約650km、マニラが約1,000km、1,000kmを超えてようやく中国・海南島が圏内に入ってきます。

1,000kmというと、上海を起点にして山口県に到達する距離です。

無題の地図

ベトナムでは南沙諸島、西沙諸島問題はセンシティブな問題

ベトナムは南沙諸島、西沙諸島の領有権を主張しています。

身近な問題で言えば、私の会社ではよくベトナムの地図をモチーフにしたデザインを依頼されることがあるのですが、パンフレットの背景にベトナムの形を使用する際などにも、必ず南沙諸島、西沙諸島が描かれていないと印刷をすることができません。

A4パンフレットの一部にベトナムをモチーフにした場合、南沙諸島、西沙諸島のサイズなど1〜2ドット程度にしかならないのですが、それでもデータ上にこれらの場所が記載されていることが求められます。

ましてや情報の入った地図を制作・印刷する場合は、データ作成をした上でハノイの当局に何度もお伺いを行い、許可証をもらわなければ印刷をすることができません。

日本で言えば、日本地図をモチーフにしたデザインに必ず尖閣諸島が記載されていなければならず、なければ印刷が許可されないという状況です。

実効支配が進み、当面解決はしない。既成事実化が進む。

今後どのようになっていくかは中国がどのような動きをするかということにかかっています。実際に大型機の離着陸が可能な3,000km級の滑走路が完成したわけですし、いずれ軍事基地化が進むでしょう。

中国は建前と本音を使い分けながら、この地域を実効支配すると思われます。その時、対抗するベトナム、フィリピン、マレーシアが異議を唱えても中国は痛くも痒くもないので態度を変えないと思います。これからも漁船の駆逐や拿捕など小競り合いが続くでしょう。

アメリカは航行の自由を表明してはいるものの、当海域で中国と紛争に至ることはないと思います。軍事攻撃をしても何のメリットも米国にもたらさないからです。したがって日本も同様の態度です。

同様に、将来、中国が尖閣諸島を実効支配するような事態が万一派生しても、アメリカは軍事行動には出ないと思います。あくまでも日本の領土は日本人が守った上で、初めて後方支援などの援助が米国から期待できるわけで、いきなり自衛隊の頭越しに米国が中国と戦闘を行うことなど考えられません。日本人が国民の生命を賭してまで領土を守るという世論形成と法的、軍事的な準備は進められているでしょうか?私はNoだと思います。そういう事態にならなければ良いと願う、またはそうならないように外交的努力を進めるということが現在の日本にできる限界点です。したがって、万が一そういう事態が起こった時は、取られて終わりだと思います。ちょうど今の竹島と同じようなものです。

当面、当海域では関係各国による神経戦とにらみ合いが続くわけで、時間が経てば中国の実効支配が進んで既成事実化が進むと思われます。

ベトナムは中国と国境を接しており、1979年には戦争を行っています(中越戦争)。ベトナムにとって中国との領土問題はよりリアルな問題であって、将来、何らかの事態をきっかけに紛争に進む可能性もあります。

この問題は共産党独裁の中国の政治体制が変わるまで、当面解決はしないものと思われます。半世紀ほどはこの迷惑な隣人に悩まされながら生き続けていくしかないというのが現状ではないでしょうか。

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