[今日コレ聴いた] 必ずしも幸せな人生ではなかったモーツアルトが自分自身を救済するために作った曲だと勝手に解釈して涙を禁じ得ないレクイエム: ♪NHK音楽祭2006 モーツァルト:レクイエム 二短調 K.626 / ニコラウス・アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス,アルノルト・シェーンベルク合唱団 2006年11月 – YouTube

実はこの映像の演奏会、当日私は現場にいました。前年にアーノンクールのレクイエムが発売されてクラシックには珍しくヒットをしたのですが、満を持して25年ぶりにアーノンクールが来日するということでチケットを買ったのです。前席2列目だったので、アーノンクールが手に取るように近くに見えました。
本当にあっという間の演奏会だったのですが、今こうして映像を見返してみても当日の緊張感や張り詰めた空気が思い返されます。

モーツアルトは35歳の短い人生の中で900曲以上もの数を作曲しています。まさに偉大な芸術は量が質を作るのであって、多作であるにもかかわらず駄作が少ない作曲家です。当時の作曲家はすべてスポンサーからの依頼によるものであり、生活の糧でしかありませんでした。当然、依頼者の希望や気にいるように作曲をするわけで、個人的な感情や好みを織り込む余地は少なかったわけです。それをモーツアルトは作曲家人生30年として年に30曲、2週に1曲以上を多作していたことになります。

膨大なモーツアルトの楽曲の中でレクイエムだけは別格です。ラクリモサで絶筆となった曲ですが、ここには死を目前にしたモーツアルトの嘆きや恐れが率直に反映されているように思います。初めて他人のためではなく自分自身のために作った曲であるように想像するのです。幼い頃から神童ともてはやされながらも決して幸せな人生ではなかったモーツアルトの苦悩が感じられて涙を禁じえません。

演奏に先立つ舞台裏映像でアーノンクールが「朝食に大きなパパイヤを食べてまだ飲み込めない状態で歌うのです。」と言ってます。わかり易い表現ですが、実際にこのように歌うのは難しいでしょう。古楽器を使った演奏ですが、それが現代的な新しさを感じさせてくれる演奏会でもありました。

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