青空文庫・織田作之助「わが町」を読んで、観た

ファンテイエット2日目。観光地ながら旧市街は新年2日とあって店もほとんど開いておらず、ほぼ1日ホテルで過ごしました。午後読んだのが織田作之助のわが町。いきなりフィリピンのベンゲット道路工事の話で面食らいますが、ストーリーの大半は大阪の河童(がたろ)横丁とその住民の3代に渡る物語です。30歳前後の若い作之助がこれだけの物語を作り上げることができたと言うのは、全く天才だとしか言いようがありません。主人公の佐渡島他吉は一本気な男で情に厚く、周囲の迷惑を顧見るということのない男です。作品の中では人間の命が大変軽く扱われており、ベンゲットの工事現場では数百人の命が一瞬にして失われてしまいます。他吉の家族も同様で皆呆気ないほど不幸な結末を迎えます。失われていく命の対比にあるのが、残された命に対する他吉の情と愛おしさであり、周囲をトラブルに巻き込みながらも時代が進み結末に突き進んでいきます。明治、大正、昭和と50年の物語をこれだけコンパクトな作品に詰め込んでいるのでどんどん時代が展開していきますが、お国の為にと命を捧げることを強いてきた当時の国家に対する批判も感じ取れます。一気に読み上げた後、YouTubeで同名の映画がアップされていたのでこちらも観ました。映画は1956年の作品、南田洋子の初々しい姿見ることができます。時代設定は監督の川島雄三によって変更されており明治から太平洋戦争後までの話となっていますが、登場する女性たちの服装が着物から洋服に変わっていくことで他吉の老いが上手く表現されています。川島と織田は戦前、日本軽佻派を名乗り暗い世相を皮肉った同志ですがいずれも夭逝しています。短い人生の中で燃焼していったこの2人の熱い情熱を感じる作品であり、今となっては失われてしまった日本の庶民的姿を思い浮かべることができる作品でもあります。原作も映画も勧めます。

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