読書感想文: 出井 康博著「ルポ ニッポン絶望工場」新聞・TVが報じない「現代の奴隷労働」

Amazon kindleで「ルポ ニッポン絶望工場」(出井 康博著)を読了しました。新刊本がネットですぐに読めるとは便利な時代になったものです。本書はAmazonでも高評価を得てベストセラーになっているようです。
ベトナムに在留していると身近に人材関係の仕事や日本語関係の仕事をしている人も多く、ブログでこういう記事を書けばそういう方々から敬遠されるかもしれませんが、ベトナム在留邦人として日々感じていることを書いて一石を投じてみたいと思います。

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留学生や研修生の名目で来日するベトナム人が急増している

現在、留学生や研修生の名目で来日し、日本で単純労働に従事する外国人が急増しています。中でも2010年以降、アジア人の増加は目覚ましいものがあり、ベトナム人だけで現在14万7000人、その他、ネパール、ミャンマー、カンボジアなどアジアの国々からの労働者も増えています。
もちろん日本政府は海外からの単純労働移民を認めているわけではないので、彼らの多くは留学生や研修生として来日します。週28時間以内という実質的に守られていない法規制をかいくぐり、労働力が不足している農漁村、コンビニ、工場、夜間勤務、配達など日本の若者が敬遠する仕事に従事しています。これに伴いベトナム人による窃盗や傷害などの事件も増加しています。

出稼ぎのために単純労働として来日する”留学生・研修生” ベトナム人

留学生といえば優雅に聞こえますが、実態は単純労働者です。ベトナムの貧しい農漁村で育った若者を、「日本に行けば学校や会社で学びながら、お金を稼ぐことができる」と勧誘し、日本に送り込む「送り出し業者」がいます。送り出し業者は日本人であったりベトナム人であったりしますが、日本側には「受け入れ業者」がいて、研修生であれば工場へ、留学生であれば日本語学校や専門学校に送り込みます。しかもこれらの受け入れ事業は国の監督下にあります。
もし彼らが国費や私費による真の留学生であれば問題はないのですが、実態はベトナムでも中下層の若者たちで、ほとんどまともな高等教育を受けず、あいさつ程度の日本語しか出来ないレベルの若者が来日しています。その目的は日本で学ぶためではなく、金を稼ぐためです。

留学生ビジネス・研修生ビジネスは生活保護者を食い物にする貧困ビジネスと同じ構造

更に問題を悲惨にしているのは留学生や研修生を送り込む「業者」が中間搾取をしていることです。
留学生は日本に留学するために150万円近い金を業者に支払って来日します。ベトナムの150万円というと日本の700万円〜800万円に相当する金額です。実家の田畑を抵当に入れて借金し、来日している者が大多数です。
そのためいったん日本に来てしまうと辛いからといって逃げ帰る訳にはいきません。とたんに実家が破産してしまうからです。ベトナムでの破産は日本の破産とは訳が違います。破産をすると実刑を受けて刑務所に行かなければなりません。家族思いのベトナム人にとって親が刑務所に行かなければならないような状況は絶対に受け入れられません。

さらに日本に来てからも寮費や光熱水費、アルバイト紹介料、会社紹介料などの名目で中間業者から搾取され、日本人なら手取り16〜7万円のところが10万程度にしかならないのです。彼らは借金は返済しなければならない、月々の支払いからは差し引かれる、最底辺の生活をしながら法律違反だとは知りつつ寝る間も惜しんで2つも3つも仕事を掛け持ちしていなければならないという状況に追いやられています。

よく「ベトナム人は勤勉だ」などと言われますが、ベトナム人が特に勤勉なわけではありません。その裏にはにっちもさっちもいかない状況の中で必死になって稼がなければならないという状況があるのです。
このような底辺の弱者から搾取するビジネス構造は生活保護者を対象にした貧困ビジネスとまさに同じ構造です。

聞いて呆れるクールジャパン・おもてなしの国

日本政府は「クールジャパン」「おもてなし」などのスローガンのもとに来日外国人を増やそうとしています。またそのための助成策や広報なども急増しています。ホーチミン市でも年に何度か日本文化や日本食を紹介するイベントやプロモーションが行われており、その多くは日本国民の税金を使って行われています。また最近YouTubeなどで「日本はこんなにすごい国だ」と発信するネット右翼系の情報が溢れかえっています。
日本政府が日本の文化や食をプロモーションすることは全く問題ありません。日本の魅力をもっと多くの海外の人々に知ってもらうことも大事でしょう。しかし足元で臭いものには蓋をしながらこのようなプロモーションを行っているのであれば本末転倒です。来日したベトナム人労働者は、夢を抱いて日本に来たにもかかわらず、現実を知って失望し、やがて反日になって帰っていきます。

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公園でポケモンに興じる若者たち。日本の若者と大差ない普通のホーチミンっ子である

過去の栄光を懐かしむ時代は終わった

1980年代に海外に生活していた自分としては、当時の日本はまさに「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代で、文化的にも経済的にも世界から羨望の的でした。しかし現在の日本人の反応は、日本が一流国から二流国へ転落したことへの焦りと自己欺瞞によるものでしかないように思えます。中国の経済発展や冷戦後の構造変化などにより、日本の相対的な国力が下がってしまったのだという事実を受け入れないと、国はおかしな方向に向かってしまいます。なぜ日本人が日本のことを自己自賛しなければならないのかといえば、それは自分自身が「もはや一流ではなくなった」という受け入れがたい事実を受け入れられないからです。
人間でも現実の自己を受け入れずに理想に走ると自己欺瞞になり、最終的には神経症になってしまいます。
「俺は彼らが言うほどそんなに大した人間じゃないんだ」ということを受け入れた上で、真の自信を取り戻すための具体的な活動に邁進するしか日本が生き残る道はないのではないでしょうか。またそのためには他者から学ぶ態度も必要です。ベトナムからも学ぶべきことはたくさんあります。

悪いのは中間業者による搾取だけではない

ここまで中間業者や日本政府の問題について書いてきましたが、本書にも書かれていない問題点をさらに指摘すると、中間業者や日本政府以外にも問題があります。
ベトナムは長く植民地下にあり、長い戦争を経てようやく独立を勝ち取りました。しかしそれは南北ベトナムの同一民族による戦いという悲惨な歴史を経て実現されたものです。また経済的な自由化は進んだとは言え、いまだ共産党一党国家です。
このような国情の中、経済力=金がモノを言う社会になってしまいました。先にも書きましたが、ホーチミンやハノイであれば日本の生活と大差ありません。むしろ物価が安い分、日本よりも暮らしやすいでしょう。
しかし地方に行けばまだまだ貧しい農村、漁村が中心の国です。地方に生まれた若者は、日本の東京格差など比較にならないほど貧しい生活を送っています。そんな何も知らない若者に外国(=日本)に行って学びながら金が稼げるというのは夢のような話ですが、現実はそんなに甘くありません。
よく実態を勉強しないで安易に日本に来ようとする若者たちにも責任の一端はあります。金のことばかり考えて、どのような人間、社会人になりたいのかという信念を持った若者が少なすぎます。またこのような悲惨な状況に対して支援を行ったり、適正な規制や啓蒙活動をしないベトナム政府も問題があります。
私はベトナム人の若者にはぜひベトナムのために努力をして欲しいと思います。ベトナムが援助に頼らなくても世界に対して貢献できる国になって初めて真の独立を勝ち取ることが出来るのであると思います。

本当に尊敬されたいなら、尊敬することが必要

多くの日本人はベトナム人をはじめとして、中国人、韓国人などを自分より劣った国民であると考えて差別をしています。自分たちが経済的に劣っている間は彼らもそのことを受け入れて、援助や差別に甘んじるでしょう。しかしやがて国力がつき、日本なしでもやっていけるとなった時に本当に日本は世界から尊敬される国であり続けるでしょうか?

本当に尊敬されたいなら相手の悪いところではなく良い部分、勝っている部分をじっくり見て研究することが必要です。会社でも社長や上司が競合会社の悪口を言っているような会社はだめです。競争相手が自分たちより勝っているところを受け入れて、はじめて相手に対する尊敬と自分達もやってやろうという意欲が生まれてくるものです。

わたしは本当に幸せならあえて他者から評価される必要などないと考えていますが、武士の国の子孫として情けは人のためならずを実践していくことが大切だと思います。他者の評価よりも行動を通じて自己に対する自信を高めていくことが重要なのではないかと思います。

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