サイゴン1区からカンザーまで55km長距離ウォーキング体験記

 

2020年7月11日、12日の2日間でサイゴン1区からカンザーまで徒歩で旅行してきましたので、歩行の記録をご紹介します。

カンザーとは

カンザーはホーチミン中心部から南方へ約55km、南シナ海に面したマングローブ林や野生の猿、ワニ園などで有名な地域です。ホーチミン市内からは、ローカルバスとフェリーを乗り継いで行けば3時間ほど、比較的簡単に行くことができますが、歩いて行くとなると約12時間歩き続けなければなりません。
コロナの影響でサイゴンがほぼロックダウン状態であった4月にウォーキングを始めて、毎日、平均10km以上歩き続け、これまでの累積距離が1000キロに到達したので、これを機に、自分の体力でどこまで行けるのか、試してみたいと思ってカンザーを目指しました。

2020年7月11日(土)

午前5時半 スタート

普段ウォーキングをしている5時半に自宅をスタートしましたが、今回は1泊可能な荷物とミラーレスカメラを背負っているので、総重量は7kg、そこそこの重さです。
靴は毎日のウォーキングでも履いているビブラムファイブフィンガーズ。最大の特徴は5本指のシューズであることで、一般的なジョギングシューズの場合、主にかかとから接地して歩くのに対し、5本指シューズは足の指の後ろ側を使って歩くフォアフットウォーキングになるので、長距離を歩いても疲れにくいのが特徴です。

1区中心部を快調に過ぎて、サイゴン川沿いを4区から7区へと進めます。
4区からNha Beまでの1本道は土曜日といえども交通量が多く、歩道も露天が出ていたりバイクが駐車していたりして、正直歩きづらいルートですが、様々な障害物を避けながらBình Khánhフェリー乗り場を目指しました。

午前9時40分 Bình Khánh フェリー(16.7km)

途中、障害物が多くてスピードは稼げませんでしたが、約4時間でBinh Khanhフェリー乗り場に到着しました。フェリーを待つ車やバイクで渋滞していましたが、徒歩であれば特に待つことなくすぐに乗ることができます。しかも運賃は1,000VNDと嘘のような値段です。
10分程度の運航で対岸に到着。対岸はすでにカンザーですが、ここから延々とマングローブ林を抜けて、海岸に到達するには約40kmもあります。

10時54分 22km地点

朝のうちは少し曇っていたのですが、9時ごろから晴れ渡り、どんどん気温も高くなってきました。ひたすらまっすぐな道を歩き続けましたが、直射日光が強すぎて帽子と半袖シャツでは体力が消耗してしまいます。傘を出して日を避けながら歩きました。この時期のベトナムは日が陰っていればさほどでもありませんが、快晴だと暴力的な日差しが降りかかります。あいにく、この日はとても日差しが強く、紫外線も強烈なので、歩行よりも太陽光で体力が奪われてしまいました。
1.5L用意した水も途中で全て飲んでしまいました。

13時15分 28km地点

ここまで道中、まばらに民家が立っているだけでしたが、少し開けた集落に到着しました。かなり脱水症状に近くなっていたので、レモンティーと500mlの水2本を買って水分補給。
すでに30km近く歩いてきて、全工程のちょうど半分程度まできました。
当初の予定ではこの近くのNha Nghi(民宿)に一泊する予定でしたが、しばらく体を休めているうちにむくむくと冒険心が出てきて、このまま歩けるところまで歩いてやろうという気持ちになってきました。体力的にはまだ6割程度消耗した感じですし、日没まではあと5時間程度あります。

14時29分 38km地点

この辺りは気が遠くなるほどまっすぐな道路で、歩いても歩いても単調な景色が広がります。片道3者線で道路もきれいに舗装されており、比較的歩きやすいのですが、数分に一回、猛スピードのバイクや車に追い抜かれる時以外は、草木が風になびく音と虫の音と自分の呼吸の音しか聞こえません。
折からの熱気と体温の上昇でランナーズハイに近い状態であったかと思われますが、だんだん雑念が払われていってただ穏やかで幸せな気分になってきました。歩いている時には様々な想念や思いがこみ上げてきますが、私は歩くときはその思いには囚われないように心がけています。湧き出てくる様々な思いや感情を手放して、ただ自分の体と呼吸に集中していると、疲れていることも忘れて幸せな感情だけが残ります。


40kmを超えたあたりからは、自分でも歩いたことがなかった距離に到達したのですが、それでも歩き続ける体力は残っていました。
しかし夕方4時近くになると、急激に体力が落ちてきて、30分歩くたびに5分立ち止まるという状況でした。路上には腰掛ける場所もなく、後で気付いたのですが、両足の親指の付け根にマメができてしまいました。

午後5時15分 41km地点

だんだん日が落ちてきました。周辺はまだ明るいのですが、ここからだとまだ15km、3時間程度かかります。目的地に到着するのは午後8時半ごろになりそうです。
この時点で、3つの選択肢がありました。

1)そのまま歩き続ける
2)いったん歩行を中止して、目的地近くの宿に泊まる
3)ここで撤退をする

どうしようか考えながらも、なんとか1)の方向で歩き続けようとしましたが、午後7時もすぎると、日もとっぷり暮れてしまい、足下以外は全く何も見えなくなってしまいました。目的地の手前、数キロにわたって道路には街灯がなく、おまけに立ち止まると巨大な蚊が襲ってきます。以前、ある知人がカンザーで蚊に刺されてデング熱になったと言っていたことを思い出し、疲れているにもかかわらず止まるに止まれない状況です。しかも足にできたマメが肥大化してしまい、いよいよ歩くのが辛くなってきました。

午後6時50分 48km地点

夜中であっても数分に一度はバイクや車に追い抜かれましたが、そのうちの一台が、私の目の前で止まってカンザーの町まで乗せていってくれると言ってくれました。
この日も何度かバイクや車が止まって乗せていってくれると言ってくれたのを断ってきたのですが、この時点であと2時間近く歩き続けなければならないこと、着いてからも宿を探さなければならないこと、追い抜く車が猛スピードを出していてとても危ないことなどが頭に浮かんできて、好意に甘えることにしました。ドライバーは地元の家族のようで、話しかけられたベトナム語にも満足に答えることができませんでしたが、ほんの10分程度でカンザーの町に到着してしまいました。

午後7時半

Google Map上では何軒かのNha Nghiやホテルがあることを検索して知っていたので甘く考えていたのですが、街中でバイクタクシーを捕まえて何軒かの宿に当たったものの、どこも満室だと断られてしまいました。おそらく空いているに違いない宿もあったのですが、コロナで微妙なこの時期に外国人を気持ちよく泊めてくれるところはありませんでした。
調べてみると、カンザーから自宅までGrabで650,000VND、ちょっとレベルの高いホテルだと700,000VNDなので、思い切ってGrabで自宅まで帰ることにしました。
12時間以上歩き続けてきた道も、Grabに乗ればほんの1時間半程度で戻ってきてしまいました。午後10時前には自宅に着き、シャワーを浴びて缶ビールを1本飲み干すと、疲れのため深い眠りに落ちてしまいました。

2020年7月12日(日)

朝はすっきりした気分で目覚めました。今日は何しようか考えてみると、特に差し迫ってやりたいことがありません。それならばと、昨日のリベンジをすることにしました。昨晩ピックアップしてもらったポイントまでバスで行き、そこから残りの経路を歩くことにしました。

先ほど書いたとおり、ホーチミンからカンザーまではGrabで650,000VNDですが、ローカルバスだと、ファングーラオのサイゴンバスターミナルからフェリー乗り場まで6,000VND、フェリー代が1,000VND、フェリー乗り場からカンザーまで7,000VND、合計でも14,000VNDと交通費は激安です。

朝、サンデーモーニングを半分くらい見てから、7時すぎに自宅を出て、バスとフェリーを乗り継いで昨日のピックアップポイントに着いたのが10時30分ごろでした。

ここからだと目的地まで約9km、普段は平均的に10kmは歩いているので、軽く2時間、楽勝だと考えていたのですが、昨日できた足のマメが悪化して、1歩歩くたびに激痛を感じます。さらに足の痛い箇所を避けようとしてかばいながら歩くため、歩行がおかしくなり、今度は足の側面まで痛くなってきました。
この日も朝から気温がぐんぐん上がり、11時過ぎには35度は超えていたと思います。
10分歩いたら一度立ち止まるというペースで、結局、目的地のHang Duong市場に到着したのは午後1時過ぎ、3時間近くもかかってしまいました。

Hang Duong市場にはこれまで2、3回来たことがありますが、この日はとても魚介類を口にする元気はなく、缶ビールとコーラを煽っただけで外の椅子で眠りこけてしまいました。午後2時ごろ、体調が戻ってきたのを確認して、同じルートをたどって帰宅しました。

まとめと反省点

  1. 日が暮れてしまって歩行が困難になるといった外部要因がなければ、体力的には50kmから60km、10時間から12時間は歩き続けることができることが確認できました。
  2. 体力が限界に近いと、様々な判断力が落ちてしまいました。初日に手首につけていたApple Watchを不用意にカメラにぶつけてしまい、スクリーンを破損してしまったのは痛かったです。
  3. 初日の荷物7kgは少し荷が多すぎました。長距離を歩くのであればもっと荷物を軽くすべきでした。
  4. 車やバイクを止めて乗せていってくれようとしてくれたベトナム人が何人もいたことには感激しました。言葉は通じなかったけれど、改めて感謝したいと思います。
  5. ただ歩くだけですが、自宅にじっとしていたのでは経験できない様々な体験をすることができます。
  6. いずれチャンスがあれば、条件を整えて今度は100kmに挑戦したいと思います。
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