ベトナムでは印刷ができないデザイン

カタログに載せたかったが却下されたベトナム地図

上の画像は先日、某クライアントに提出したカタログデザインの一部です。出所をわからなくするために一部加工していますが、ブルーの地色にブルーのベトナム地図を掲載するというもので、高さ約3cmとごく小さく扱ったデザイン要素です。

制作側としては地図をデザイン要素として使用することは避けたかったのですが、ベトナム人を対象にしたカタログだということで、どうしても地図を載せて欲しいという依頼でした。

 

オリジナルの地図画像はShutterstockからダウンロード購入したもので、著作権もクリアしたものを利用しています。

このデザインでは印刷ができない

もしかしたら問題になるかもしれないと思いつつ入稿をしたのですが、案の定、このデザインでは印刷ができないというダメ出しが出てしまいました。

理由は地図の上に西沙諸島と南沙諸島が記載されていないからというものです。

Googleマップ上では西沙諸島と南沙諸島は上記の位置にあります。真面目にこの二つを掲載しようと思ったらベトナムは縦長ではなく四角形で表示しなければなりません。

ベトナムで印刷をするには印刷許可証が必要

書物や雑誌や地図はベトナム政府から許可を得たライセンス会社に印刷ライセンス(許可証)を発行してもらい、印刷物にライセンス番号を記載しなければなりません。

カタログやパンフレットなど商業印刷物の場合はライセンスの発行は不要なのですが、それでも地図などセンシティブな要素は要注意です。別にこのカタログをベトナム政府が検閲しているわけでもなく、印刷会社が自主規制で印刷をしないと言っているだけです。

政府・ライセンス会社・印刷会社のもたれ合いの部分も

なんでこのような面倒臭いことになっているのかといえば、もともと、印刷物はテレビやラジオと同様、情報統制の対象となっており、印刷会社はいわば許可を受けた放送局のようなものだからです。

ベトナムでは誰もが自由に印刷会社を設立して印刷できるわけではなく、政府の許可を受けた会社が政府の監視指導のもとで印刷ができるということになってしまいます。

言論の自由が保障された日本の会社から見れば、このデザイン地図に西沙諸島と南沙諸島が表示されていないから印刷できないというのは馬鹿げていると思うかもしれませんが、この規制が無くなる気配はありません。

日本で言えば、北方領土と竹島と尖閣諸島が載っていない地図は印刷禁止!のような感じですが、そのくらいベトナムでは領土問題に関してはセンシティブな問題でもあります。

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