【インド】海外進出先としてのインドは良い選択なのか?ベトナム進出との比較。

2019年2月1日から11日まで、ベトナムが旧正月(テト)の期間、ニューデリーを中心としたインドを旅行して、様々な人や会社を訪問してきました。今回の旅行は観光半分、仕事半分が目的で、特に仕事の部分では日系会社が進出する国としてインドは適正なのかどうかを知るためでした。現地で知ったことや感じたことをベトナムとの比較で書いていきたいと思います。

インドはインドのまま変わらない

実は私は1984年から2年強インドに学生として住んでいました。実に35年ぶりの訪印です。人口の増大、若者の層の厚さ、中間所得層の増加など、あらゆる統計値は今後インドが急速に経済発展をすることを示していますが、私の印象は35年とあまり変わらないなという印象でした。

確かに35年前にはなかったメトロがデリーの市内を網羅し、ショッピングモールができ、高層マンションが立ち並んでいます。当時は砂漠に近い荒地だった土地にグルガオンやノイダといった街が新たに立ち上がり、多くのグローバル企業が進出をしています。

35年前になかった光景として、かつてはデリーの中心街を牛が闊歩していましたが、今ではすっかり追い払われていなくなり、代わりに野良犬がいたるところで寝そべっていました。H&M、Marks&Spencer、Forever21、無印良品といった最新の国際ブランドと同時に、野良犬や貧民が共存しているのが現在のインドです。

インドに住んでいる人=インド人ではない

日本人から見るとインドに住んでいるのはインド人であると単純に考えてしまいますが、インドには主要言語だけで30、方言も含めると2,000近くもあり、インド国民同士でありながら会話が通じないということも当たり前です。デリー近辺の北インドではヒンディーが主要言語ですが、南インドはタミル語、西インドはベンガル語です。そのため、ある程度の教育を受けた層はインド人同士であっても英語で会話をしなければなりません。

宗教もヒンズー教、イスラム教、仏教、キリスト教、シーク教、ゾロアスター教と多様を極めています。

ベトナムでは金族が8割を占めており、公用言語はベトナム語に統一されているため、進出をする際にベトナム語と英語を対象にしておけば困りませんが、インドではそのようなわけにはいきません。インドという国家は確かに存在していますが、そこに住んでいる人々は多種多様な言語、文化、宗教を背負った超多民族国家なのです。

日本やベトナムのようにナショナルブランドが全土を覆い尽くすといった状況は容易には達成できないと思います。

10年前のベトナムの状況に似ている点もある

現在、インドに進出している日系企業は約1,300社、うち半数近くがデリー・グルガオン近辺に集中しています。デリーの日系社会も数百人レベルでしかありません。

ホーチミン近郊の日系企業数だけでもインド全土より多い状況です。すでに人材コンサルティング業や和食店などはベトナムでは過当競争の状況ですが、いまインドに進出するのであれば、十分パイオニアとしての先行メリットがあると思います。この先10年で日系企業が倍増するかどうはわかりませんが、今後トップレベルの成長を続けていけば、数千社の日系企業が進出する可能性もあります。

反面、和食店やコンビニエンスストア、居酒屋といった日本資本の企業がまだ進出をしていないので、日本人が現地に赴任をして生活をするためには相当の困難があることを覚悟しなければなりません。また海外進出をするのであれば現地人に浸透することが必須ですが、インド人にモノやサービスを提供することは、かなり困難を伴うのではないかと思います。

英語で生活をするならベトナムより生活しやすい

ベトナム人もかなり英語を話せるようになってきていますが、それでも片言レベルである人が大半です。しかしインドでは街中で普通に英語が使えるのはメリットです。

今回、オートリクシャの料金交渉をするのが嫌なので、乗る前に近くのインド人に声をかけて「どこどこまでいきたいのでいくらになるか話をしてくれ」と頼めば、ほとんどの人がドライバーに話をつけてくれました。こんな簡単な会話でも英語を全く話さないセオム(バイクタクシーのドライバー)がいるベトナムでは困難を感じることがあります。

日常のコミュニケーションが英語でできるというのは大変なメリットです。

インドのIT企業の多くは欧米を市場として仕事をしています。彼らのうち何人ものインド人が一度も外国にはいったことがないといっていましたが、普通に英語を使って欧米の仕事を行なえる状況です。

日常生活で英語が使えるという点は日本人にとってもメリットではないかと思います。

生活コストはピンキリだが意外に高い

街中で食事をしたり地下鉄で移動をするだけであれば全然安くすみますが、インドで日本人としてまともに生活をするのであれば、ベトナムの1.5倍のコストはかかると思いました。

インドで日本人がワークパーミットを取得するには、最低年収が25,000ドル以上が必要です。また住宅も月額1,000ドル前後〜、移動のためのドライバー付きの車が月額600〜700ドル、毎日カレーというわけにもいきませんから週に何度か和食を食べるとなればコストがかかります。

ベトナムでは会社を維持運営していくためには最低10,000〜15,000ドル程度の売り上げが必要ですが、インドでは20,000〜25,000ドルを売り上げないと損益分岐点には達しないのではないかと思います。

そう考えると、進出時に小さく初めて成長をするというモデルは、インドよりベトナムの方が簡単なような気がしました。

最新と旧態依然が混在している

35年前に住んでいた時、ホームステイ先のシャワーが朝にならないとお湯が出ない(日中は水)ということに辟易しましたが、今回も、同様でした。温水器も暖房機もエアコンも照明器具も全てインド製です。今回Airbnbで住んでいたのはインドでもアッパーミドルのお宅だと思いますが、家の中はほぼインド製品で埋め尽くされていました。

中国と地続きのベトナムでは、家庭製品の多くがメイド・イン・チャイナで陸路で運ばれてきます。またダイキンやパナソニックといった日系ブランド、韓国、中国ブランドも多く進出しているので、ベトナム製の製品を使用するということはほとんどありませんが、インドでは事情が異なります。

一方、街中ではPaytmというインド資本の電子決済が行き渡り、移動もUberが主流です。しかしコンビニはなく、ショッピングモール以外の商業はトラディショナルトレードが大半です。ITを活用した最先端と粗悪なインド製品が混在しているのがインドで、まさに混沌とした状態です。

まとめ・・・今ならチャンスはあるかもしれない

10年のスパンで考えれば、いま、インドに進出をすれば多くのチャンスがあると感じました。しかし成功確率はベトナムの50%〜70%であるように思います。

ベトナムは日本人にとって暮らしやすい国ですが、インドは相当覚悟が必要であると思います。安易に進出をすると痛い目にあうでしょうが、綿密な計画と折れない心を持てばビジネスチャンスはまだまだあります。

もし私がベトナムの次に進出するのであれば、インドは大変魅力的な国だと言えます。今回の旅を通じて、インドとのコネクションも強まりましたので、引き続きウォッチし続けていきたいと思います。

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