最近の”トレパク”騒動に思うこと

最初トレパクという言葉を聞いた時、一瞬どういう意味だかわかりませんでしたが、他人が撮影した写真などをトレースして描くこと、つまり「トレース+パクリ」ということだそうです。
某プロイラストレーターの作品がトレパクではないかということでネットで炎上しており、本人はトレパクではないと主張するものの、過去の作品も含めてトレパク疑惑がかけられています。

トレース自体は全く問題なし

私はトレース自体は全く問題ないと思います。特に私のようにデッサンが下手な初心者は、下絵の時点でフリーハンドではうまく描くことができず少し難しいモチーフは写真に撮ってトレースをしています。
またプロの画家もトレースを行なっていることは周知の事実です。

トレースの問題点はレンズの画角に影響を受けること

むしろ私が考えるトレースの問題点は、下絵がカメラの画角に影響を受けてしまうということです。横幅に広い対象を撮影するときはどうしても広角のレンズが必要となりますが、広角レンズは中心から左右に向かうにつれて不自然なパースがついてしまいます。

こちらのお寺は今年の1月に15mmの広角レンズ(35mm換算)で撮影した写真を元に描いたものですが、左右方向に伸びて極端なパースがついており、現地の印象とは大きく異なります。

他人が撮影した写真を使うこと

絵にしてみたいと思うレベルの高い写真は、プロやハイアマチュアが撮影したものが多く、その構図や光の当たり方は素人では表現が難しいものです。
写真が発表された時点で既に作品として成立しており、このような写真を元絵としてトレースをすることは明らかに著作権違反です。
今回のトレパク疑惑はプロが発表したモデル写真が含まれているという指摘で炎上しており、作家本人は否定していますが、それを反証する明確な証拠を持つことは困難です。

引用・オマージュならば引用元を明確にすべき

今回の騒動では作者は

「引用・オマージュ・再構築として制作した一部の作品を、権利者の許諾を得ずに投稿・販売してしまった」

(弁護士ドットコムニュース

と述べているようですが、もし引用やオマージュをするのであればオリジナルと引用元を作品発表の前に明確にすべきです。また著作権が残っている作品を引用・オマージュするのであれば、作品を制作・発表する前に著作権者に許可を取るべきです。

まさに上の文章は弁護士ドットコムニュースの記事の引用なのでBLOCKQUOTEをして枠で囲み、引用元を明記していますが、文章であれ絵画・イラストであれ、オリジナルが存在するのであれば引用元を明確にしなければなりません。

既に著作権が切れている絵画など、例えばモナリザを引用・オマージュするのであれば問題はありませんが、ピカソを引用・オマージュするのは大問題になる可能性があります。

ネット時代は隠し立てできない

このような騒動が起こっている理由の一つは、作品が多くの人々の目に留まり、もしその作品が100%オリジナルでなければ問題を発見・指摘し拡散する人が必ずいると思って間違いありません。
特にプロが剽窃を行なってその疑いが持たれた時点で作家生命は終わりだと考えたほうが良いでしょう。
この時代、何がきっかけで作品が人気を得たり、拡散し始めるかも分かりません。幸運にも自分の作品が人気を得ることができたとしても、それが100%オリジナルでなければ将来大問題になる可能性があります。

また今後は技術が進歩しているビッグデータ解析などを使用すれば、絵だけではなく文章や動画などあらゆるコンテンツの剽窃を見つけることは簡単にできてしまうでしょう。もしかしたらビッグデータを駆使して作品が99.99999%作者のオリジナルであることを保証するビジネスなども起きるかもしれません。ネット時代は最初からごまかしや隠し立てはできないという理解と覚悟が必要です。

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