映像資料としても貴重!1974年のベトナム映画「Tuổi Dại(The Green Age)」を観た

Saigoneerの記事「After Decades Under the Bed, a 1974 Vietnamese Film Finds an Audience Online」で紹介されていた映画「Tuổi Dại(The Green Age)」を観ました。

全編英語の字幕が入っているので、ベトナム語がわからなくても理解できます。

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この映画は1974年に制作されたものの、サイゴン陥落のため公開されず、監督のベッドの下に長らく埋もれていたものを最近になってYouTubeに公開したものとのことです。

1974年といえば47年前、当時この映画に出演していた俳優達が20代前半だとすると、既に70歳以上になっているものと思われます。
出演者のLinh (Yến Thu)、Dzũng (Duy Phúc)、Ngọc (Trường Duy)についてネットで調べてみましたが、唯一、Loan役のThanh Maiだけは1984年にアメリカに移住したことを知りました。

ストーリーは主人公の女性(Linh)と2人の男性(Dzũng、Ngọc)の三角関係を中心としたラブストーリーで、ごくありふれたプロットですが、時代背景として1975年のサイゴン陥落直前の世相が描かれていて大変興味深いものでした。

Ngọcが通う大学としてロケで使われているのは、現在でもLy Tu Trong通りに残っているThư viện Khoa học Tổng hợp Thành phố Hồ Chí Minh(General Science Library of Ho Chi Minh City)だと思われます。

優秀なエンジニア系学生であるNgọcは学校からの推薦で「日本に留学させる予定」があるとか、「最近日本語に翻訳されたチン・コン・ソンの歌」などというセリフもあって、当時の南ベトナム人が日本をどのように感じ取っていたかが垣間見えました。

サイゴン市内のロケの映像はあまり多くないのですが、こちらはグエン・フエ通りとレロイ通りの交差点でしょうか。

奥にサイゴン大聖堂が見えるので間違いなく現在のドンコイ通りです。看板に当時の通り名である「Tự Do(自由)」の文字も読み取れます。現在はドンコイ通りは一方通行ですが、当時は両面通行だったようです。

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1974年(昭和49年)の日本はといえば、田中角栄が辞職、小野田少尉がルバング島で発見、カーペンターズ来日、長嶋茂雄が引退、山口百恵が「一夏の経験」を歌っていた年です。
アメリカ文化の影響が大きかった南ベトナムでも当然アメリカナイズされた生活が人々の憧れであったようで、Dzũngらがロックのバンド練習をする風景が描かれています。

こちらの映像はブンタウの大仏ですね。

恋人となったLinhとNgọcがブンタウに行くシーン。Linhが海岸で魚と戯れ、

てづかみで2匹を捕えて

恋人のNgọcに無理やり生のまま食べさせようとする・・・という笑えないジョークなども。Ngọc (Trường Duy)はあきらかに演技を忘れて嫌がっています。

Vo Thanhという場所に麻薬を求めて行くシーン。当時のサイゴンにはこの近くに麻薬街があったようです。この場所は今でも残っていそうな感じがしますが、どこでしょうか?

ちなみにパークハイアットサイゴンの前、ハイバーチュン通り沿いにはケシの精錬所跡が今でも残っていますが、マックティブイ通り(サンワタワーのグエン・フエを挟んで向かい側の道)には1950年代までアヘン窟があったということです。

一気飲みするシーンで飲んでいるビールは「333」ではなく「33」です。

Linhの父親がNew Rich(成金)じゃないと反論するところ。金持ちに対する当時の社会の捉え方が出ています。

終盤のダラットのシーン。昔も今もダラットは恋人達が訪れる場所のようです。

感想

制作から1年たたないうちにサイゴン陥落があり、この映画はお蔵入りに。
その直後、監督、俳優、スタッフ達は全員想像もしなかったような激動の時代に巻き込まれてしまったのだと考えると感無量です。
昔も今も、若者が考えることにあまり変わりはなく、年輩者の考え方もあまり変わりありません。
プロットもカットも現代の水準で見ると非常に稚拙ですが、当時のサイゴンの雰囲気を感じるにはとても良い映像でした。YouTubeの時代になってお蔵入りになっていたこの映画が観られることに感謝します。

興味のある方はこちらのリンクからどうぞ。

[blogcard url=”https://www.youtube.com/watch?v=dHwABXu4kuY”]

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