【ベトナム近現代史】一枚の写真が世界を変えた。ピューリッツァー賞「サイゴンでの処刑」が撮影された現場を訪ねて(修正版)

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先週、Facebookグループの情報を元に「サイゴンでの処刑」の撮影現場を訪ねてきましたが、その後、場所が誤っていたことが分かりました。実際にはLý Thái Tổ通りではなく、Ngô Gia Tự 通りであり、Lý Thái Tổからさほど遠くない場所でした。この写真が撮影された時代背景は前回のブログに書いたとおりですが、今回は当日撮影された他の写真と比較しながら検証します。

前回のブログはこちら

以下閲覧注意。死体の写真が表示されます。

当時の写真と現在のNgo Gia Tu通り

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Ngo Gia Tu通りにはこれまであまり用がなくて来たことがなかったのですが、今日ここを訪問して、ベトナムに来たころ、家具を買いにこの通りまで来たことを思い出しました。当時も今も、質が悪そうな家具が雑然と売られていて、ローカルな佇まいの場所です。

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最初に来たのは197番地。グエン・ヴァン・レムが殺害される直前に写っている写真には197の文字が写っています。

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ここに来てすぐ、この場所で間違いないと確信しました。隣の193-195番地のQuang – Trungという店は当時の写真でもQuang – Trungとなっていますし、この建物の2階ベランダにある特徴的な穴の空いた側壁は当時の建物と同じものであることを示しています。当時の写真では店は閉まっていますが、これは撮影されたのがテト(ベトナムの旧正月)の最中だったからでしょう。

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こちらの写真は恐らく時系列的には一連の写真の最初に撮られたもので、写真の右側に斜め方向に向かう道路が見えます。この通りは現在のSư Vạn Hạnh通りです。角に欧米人らしい男性と左奥にはビデオカメラを持った兵士が立っています。恐らくこの処刑はあらかじめマスメディアを呼んで行われたものではないでしょうか。テト攻勢の最中、政府軍に逆らうとこうなるのだということを喧伝したかったのではないかと思います。

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ほぼ同じ場所を反対の角度から撮った写真。連行する左のサングラスをかけた兵士と白い紙のようなものをもった右側の兵士は上の写真と同一人物です。右側の西洋人はジャーナリストでしょうか。行く手を阻もうとしているのを兵士が阻止しているようにも見えます。

前回のLy Tu Trong通りでの写真では道路の奥、角地に建っている7階建てのビルがなかったので、既に取り壊されたものかもしれないと言いましたが、ちゃんと残っていました。

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当時はこの周辺はあまり高い木がなかったようですが、現在は街路樹に覆われています。建物の角はBia truyền thống Vườn Làiとして当時のテト攻勢を称える場所となっています。

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このような戦功を称える記念碑はベトナム各地にありますが、当然、当時の敵は米国軍や韓国軍であり、ここで処刑されたベトコンのグエン・ヴァン・レムも賞賛の対象となっています。現在のベトナムと米国の関係を考えるとこのような記念碑は矛盾を感じますが、良くも悪くもしたたかで現実的なベトナム人気質が現れています。

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そして問題の写真。この1枚の写真がその後のベトナムと米国の歴史を変えることとなりました。
撮影をしたエディ・アダムスは後年、この写真を撮ったことを悔み、「写真は真実ではあるが真実の半分も語っていない」と述べています。
殺害を実行したロアン将軍はその後ベトコンに命を狙われることとなり、サイゴン陥落後は米国に亡命しました。しかし彼の地でも安住することは出来ませんでした。米国政府の支援を得てピザレストランを経営していましたが、ある日、自分の店のトイレに「お前のやったことは忘れないぞ」という落書きが見つかり、その後、レストランも廃業して米国で癌のため亡くなっています。

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最後のカットは頭から血を流して倒れたグエン・ヴァン・レムの写真。子供たちが遠巻きに見ています。5〜6歳の子供たちでしょうか。もしそうであれば現在は50代半ばになっていると思います。

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日曜にもかかわらずNgo Gia Tu通りの商売熱心な家具屋は店を開け、あたりは家具を運ぶバイクや3輪車が行き交うばかりでした。約50年前にこの場で行われた衝撃的な事件を感じさせるものは何もありませんでしたが、ここは歴史を変えた現場であり、その後のベトナムに大きな影響を与えた事件であることは間違いありません。

穏やかな夏のサイゴンの街角で、今でも事件を見つめていた子供たちがヘムの影から飛び出してきそうな錯覚を感じました。

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